二上山の危険生物(イノシシやハチ,山ダニ(マダニ),マムシなど)
<イノシシ>
二上山にはイノシシが生息している。
山を囲むように各所にフェンスが見られるが、イノシシが山から出ないようにするためだ。
標準のルートでは見られないが、谷合の外れたルートなどを通ると、イノシシが泥浴を行う沼田場(ヌタバ)が散見される。
イノシシは昼間は隠れているので問題ないだろうが、夜間に遭遇すると危険だ。
突進にて負傷する恐れがある。
オスは牙を用いた攻撃で、作業服程度の厚さの布なら容易に切り裂く。
メスは牙が短いが、噛み付き攻撃を繰り出してくる。
イノシシの成獣は70kg以上の体重があり、時速45kmで走ることもできるため、その強烈な突進力で大人でも跳ね飛ばされて大怪我を負う。
二上山では不明だが、日本ではイノシシによる攻撃で死者が出ている。
イノシシは神経質で警戒心の強い動物であり、見慣れないものを避けようとする習性がある。
よって、夜間に移動する場合は、ラジオなどで音を出しながら、イノシシに自分の存在を知らせ、突然の遭遇を避ける工夫をする。
また、イノシシには山ダニ(マダニ)が大量に付着しているため、山ダニ(マダニ)に噛まれることによる感染症にも注意が必要(後述)。
<ハチ>
秋になると危険なのが、ハチだ。
夏は暑いので登山を避け、少し涼しくなったからと登山を行うと、ハチに遭遇、攻撃されることとなる。
ハチの巣が、自分の進行方向に存在するかを予測するのは困難なので、ハチの季節は登山を控えた方がいいだろう。
ハチといってもオオスズメバチ、キイロスズメバチ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、モンスズメバチなどの種が存在し、活動期間が若干異なる。
活動開始は4月あたり、終息は10~12月あたり。
特に危険なオオスズメバチ、キイロスズメバチの活動が活発になるのは7~10月なので、この期間は避けた方がよい。
特に標準ルートから逸れた込み入ったエリアに入る場合は注意。
ハチの巣に出くわす可能性が高くなるし、攻撃された場合、狭小や斜面などでは移動できず攻撃を回避できない。
また、そのような場所では他の登山者がほぼいないため、助けを求めることもできない。
日本に於いて、年に何人かはハチの攻撃による死者が出ており、十分な注意が必要である。
通常の装備に於いてハチの攻撃を回避するのは困難であり、攻撃を受けないのが重要。
<山ダニ(マダニ)>
山ダニ(マダニ)は葉の裏などに潜み、服に付き、脇の下などに移動して吸血する。
世界には800以上の種類、日本では47種が生息している。
吸血されている間は気付かず、豆大の大きさになってから気付くこともある。
吸血をするため、野生動物が生息する環境に多く、イノシシのいる二上山にも山ダニ(マダニ)が多数生息、イノシシ(特に腹)に大量に付いている。
よって帰宅したら、速やかに風呂に入り、体にダニが付いていないかを確認する。
その上で、登山に使用した服は速やかに洗濯、リュックなどの装備も室内に入れない方がいいだろう。
装備品にダニが付いていると、その後室内に移動し、同居人などが攻撃される可能性があるためだ。
ダニが媒介する感染症もあるので、除去の際には注意が必要。
山ダニは、私も二上山でヤラれた。
被害は特に3月から増え始め、6月が最も多くなっている。
二上山にはイノシシが外に出ないよう(田畑を守るため)、獣害防止柵が立てられているが、イノシシが柵に沿って歩くため、その近辺にマダニが落ちていることもある。
柵は山の入口近くに存在するため、山奥ではなくとも危険(山菜採り程度でも危険)だということである。
マダニが媒介する危険な感染症
・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や
・日本紅斑熱
・ダニ媒介脳炎
・ライム病
・野兎病
SFTSは死亡率が高く危険。
噛まれてから6日から2週間の潜伏期の後、発熱や嘔吐腹痛などの症状が出る。
有効な薬剤やワクチンはない。
国立感染症研究所が調査を始めた2013年以降、2017年2月時点で累計229人の感染報告、うち、2割の53人が死亡した。
忘れた頃に発症することもあり、3週間程度は体調の変化に注意する。
2016年には60人が感染した。
日本紅斑熱の潜伏期は2~8日で、頭痛や発熱、発疹など。
抗菌薬で治療できるが、重症化したり死亡したりすることもある。
マダニによる感染が最も多い感染症で、2016年の感染者数は275人、年々増加傾向にある。
付着し吸血されても気付かないため、付着自体を防ぐ必要がある。
腕や足、首など、肌の露出が少ない服装にし、首にはタオルを巻く。
さらにズボンの裾を靴下に入れ、シャツの袖口は手袋の中に入れるなどの対策を行う。
ずれる場合は服との隙間をガムテープで塞いでもいい。
とにかく、手首や足首などを露出しないこと。
登山なので、見た目の格好悪さは、それほど気にならないだろう。
付着に気付いても、無理に引き抜いてはならないとされる。
マダニの口が千切れて皮膚に残ったり、マダニの体の掴むことで体液が吐き出され、人の体内に入るからだ。
そのため、病院に行くと皮膚ごと取り除き、数針縫うという対処がされることもある。
二上山に犬などのペットを連れて上がる人も散見されるが、姿勢の低いペットは攻撃を受けやすく、特に注意。
家に連れ帰る途中の車内で外れ人へ移る危険があるので、登山終了後、現地にてマダニの付着がないかを確認すること。
とはいえ、犬は全身を毛で覆われており、噛まれているとの自己申告もしないので、発見は困難ではないが…
マダニごときでと言いたいが、病院に通う費用や手間がかかることを考えると、面倒でもしっかりとした対策して入山することが重要である。
<マムシ>
マムシ(毒ヘビ)は普通にいるので注意。
↑廃小屋(噴水公園から鳶塚の間)付近で遭遇したマムシ(2017年5月)。
マムシ(ニホンマムシ)は、丸の中に点があるような模様が特徴。
マムシの出現箇所は藪や水場周辺と言われるが、若干茂った登山路にもいる。
藪のマムシを先に知るのは困難なので、膝から先は、厚めの装備をしておいた方がよい。
夜行性と思われているが、4-5月あたりは昼行性傾向が強いので、昼だからといって安心はできない。
なお、犬を散歩に連れて山に上る人がいるが、犬は顔が低い位置にあるため、鼻あたりをマムシに噛まれる事案が発生している(死にはしないが顔が腫れる)。
<蚊、アブ、ハエ>
危険生物ではないが、4月以降暖かくなると、蚊やハエ、アブが大量発生する。
ハエはうっとうしいだけだが、問題は蚊である。
汗をかくと寄ってくるようで、停止すると即座に吸血に来るので面倒だ。
水分の豊富にある場所や日当たりの悪い場所、特にクイコ(クイ庫)谷などの谷合では、夥しい数の蚊が発生している。
害虫類に気を取られ集中力が低下、転落などの事故となりかねない。
虫除けスプレーを使って蚊を避け、速やかに突破しよう。
携帯蚊取線香があると非常に有効であるが、小さいものは燃焼時間が短いので注意。
直径7cm巻だと1本では心もとないので、複数持つか、標準サイズ(直径11.5cm)の携帯蚊取線香を用意するかだ。
しっかりと点火しないと、途中で消えてしまう。
途中で消えた時のために、ライターも携行すること。
残りがどのくらいあるかの確認が面倒なので、かさばりはするが、標準サイズがいいだろう。
余ったら途中で消して、自宅か次回の登山で使えばよい。
蚊取線香は正しく保管していれば、翌年も使用可能だ。
常に自分を煙で蒸していることになるので、服やリュックにニオイが付き、髪がガビカビになる問題もある。
<その他>
湿った場所ではヒル(蛭)に注意。
シカやサルもいる?
クマはさすがにいないだろう。
そして、最も危険な生物がニンゲンであるという衝撃の事実に、貴殿はまだ気付いていない…